[ この記事で分かること ]
芸人チョコレートプラネットの英語力
チョコプラのネタが海外でウケた理由
英語が通じやすい3つのポイント
TT兄弟ネタにおける英語発音の具体的な改善点
目次
チョコプラの英語力はどのくらい? 1-1. お笑いコンビ「チョコレートプラネット」がAmerica's Got Talent (AGT)予選に出場した動画が話題に 1-2. チョコプラの英語力はどのくらい? 1-3. 2023年「とにかく明るい安村」が出場した時との違いは?
チョコプラのネタが海外でもウケた理由 2-1. ネタの軸である「T」の発音が元々通じやすい音だから 2-2. 発音が違うと意味が異なる英単語を使っていなかった 2-3. 海外の方に伝わり易いシチュエーション選びが巧み
発音矯正の専門家が解説!英語が通じやすい3つポイントとは? 3-1. 日本語に無い英語の“音”について 3-2. ナミナミと抑揚のある滑らかなイントネーション 3-3. 表情・感情表現
勝手にアドバイス!「TT兄弟」の英語をより「らしく」するための具体的な改善点 4-1. 英語の発音について 4-2. 抑揚について
この記事では、アメリカズ・ゴット・タレント(America’s Got Talent/通称:AGT)の予選を突破したお笑い芸人チョコレートプラネット(通称:チョコプラ)が披露した英語版「TT兄弟」のネタがなぜ海外でウケたのかを、英語の発音矯正のプロの視点から考察していきます。
1. チョコプラの英語力はどのくらい?
1-1. お笑いコンビ「チョコレートプラネット」がAmerica's Got Talent (AGT)予選に出場した動画が話題に
今回は、最近話題になっているお笑いコンビ、チョコレートプラネット(長田庄平さん・松尾駿さん)が出場したAmerica's Got Talent(アメリカズ・ゴット・タレント/AGT)の予選動画について解説していきたいと思います。
披露したのは、2018年に「有吉の壁」という番組で誕生して以来人気のネタ「TT兄弟」の英語バージョン。
「世の中のTを探す」という内容で3分ほどのネタでしたが、4人の審査員全員から「YES」をもらい、会場も大盛り上がりでした!
動画:TT Brothers Will Make You SMILE! | Auditions | AGT 2024 / America's Got Talent より
1-2. チョコプラの英語力はどのくらい?
では、チョコプラのお二人の英語力はどのくらいなのでしょうか?
結論、お二人とも英語が達者という訳では無さそうです。
理由として、AGTの動画を見る限りネイティブの発音ではなく、ネタ終了後は通訳さんをつけていたためです。
日本人が海外でネタを披露する際には2つの壁があります。
それは、①英語が通じるか ②英語が通じた上で、ネタの内容がウケるか です。
結果は動画をご覧の通り、チョコプラのお二人はこのどちらの壁も乗り越えバッチリ大爆笑を掻っ攫っていました。
では、なぜそれができたのでしょうか?
筆者はお笑い評論家ではないので、本記事では主に「①英語が通じるか」に重点を置いて、
チョコプラのネタが海外でもウケた3つの理由を解説していきます。
1-3. 2023年「とにかく明るい安村」が出場した時との違いは?
本題に入る前に、以前話題になった「とにかく明るい安村」さんの「Don’t worry, I’m wearing!(安心してください、履いてますよ!)」のネタにも触れておきましょう。
この「wear」という単語は「何を」履くかという目的語が無いと文法として成立していないのですが、その目的語(=パンツ)を観客に言わせるという会場巻き込み型のネタに昇華していました!
一方でチョコプラのネタは、世の中の「T」が潜んでいるシチュエーションを英語で説明する必要がある分、安村さんのネタより英語力という観点では難易度が少し高いものでした。
にもかかわらず、なぜあれ程ウケたのでしょうか。
次のパートではその理由を解説していきます。
2. チョコプラのネタが海外でもウケた理由
2-1.ネタの軸である「T」の発音が元々通じやすい音だから
ネタ中何度も出てくる「T」ですが、これは日本語の「た行」と近い発音です。
英語のTの方がもっと短く強く発音するので厳密には「た行」とは違うのですが、
日本語の音の中でも海外の方にも伝わりやすい音なのです。
あの忘れられないメロディーとリズムももちろんですが、
海外の方にも聞き馴染みのあるTという音のチョイスが良いですね。
余談ですが、英語にない発音が軸となっていた場合はどうなっていたでしょうか?
例えば「ららら兄弟」だったら、ネタがここまですんなり浸透しなかったかもしれません。
なぜなら、英語には「ら」の発音が存在しないからです。
「ら」を英語の「R」か「L」に変換した場合、いずれも日本語に無い発音のためネイティブに通じる発音に仕上げるのにそれなりのトレーニングが必要です。
また、日本語の「ら」のままいったとしても上手く伝わらなかった可能性があります。
これは人間の脳が、自分が発音できない音を正しく処理できないからです。
つまり、言語として認識できない=雑音に聞こえてしまうか、または自分の知っている音と近しい音に勝手に変換してしまうのです。
日本語の「ら」の例で言えば、同じく舌をはじくように発音する(=はじき音)「d」の音に近いので、
「ら」の発音を知らない英語圏の人には「だだだ兄弟」と勘違いされたかもしれません。
まとめると、日本語の「た行」に近い「T」という音のチョイスが、海外でウケるための一つ目の壁「英語が通じるか」を突破できた大きな要因といえます。
TT兄弟ネタが誕生した時にここまで見据えていたかは分かりませんが、数あるアルファベットから「T」をチョイスされたのは発音の観点からみても流石ですね。
2-2. 発音が違うと意味が異なる英単語を使っていなかった
言わずもがな、英語と日本語では発音が全く異なります。
そのため、日本語にある発音で無理やり英語を発音する=いわゆるカタカナ英語だと、本来伝えたかった意味と全く違う意味で捉えられてしまう事があります。
例えば、「私は~だと思います」などの文章で使われる「think」という単語ですが、カタカナで「スィンク」と発音すると「sink」に聞こえます。
「sink」の意味は「沈む」。つまり「私は沈みます」と言っていると思われるので、ネタの意味が全く変わってきてしまいますね。
タイタニックのTのときに「sink」が発動していたら、会場はなんとも微妙な空気に包まれていたことでしょう。
全体的に難しい単語は使わず、かつ聞き間違いが起こりにくい単語選びが出来ていたためネタが誤解なく伝わったのだと考えます。
2-3. 海外の方に伝わり易いシチュエーション選びが巧み
これは筆者が取り立てていうほどではありませんが、やはりアメリカでやるということで、野球やタイタニックなど現地の方がイメージしやすい題材選びが巧みでした。
さらに、野球用語やショップでの日常会話、そして劇中のセリフなど、万一発音をしっかり聞き取れなくても何を表現したいのかが分かる構成になっていました。
ネタが複雑になれば説明が増え、使う単語や文章も複雑になっていきます。
さらに、説明が複雑になれば、前述の「発音が違うと意味が異なる英単語」を使う可能性が高まりネタが伝わらないリスクも増えます。
チョコプラのネタは、国に関係なく共通認識として持っているものをネタに落とし込むことでそのようなリスクを避け、ネタの面白さをストレートに伝える手法が巧みでした。
3. 発音矯正の専門家が解説!英語が通じやすい3つのポイントとは?
ここまで、チョコプラの「TT兄弟」ネタが海外でウケた理由を、英語や発音の観点から解説してきました。
このパートでは、そもそも日本語と英語は何が違うのかについて、英語が通じやすくなるポイントを3つお伝えしたいと思います。
もちろん日本語と英語は様々な要素で異なりますが、より決定的な違いは次の3点にあります。
3-1. 日本語に無い英語の“音”について
日本語と英語にはいくつか違いがありますが、代表的な“音”の違いについて、①単音、②音の組み合わせ方 の2つの観点から紹介します。
①単音
単音とは、音声を分解した際の最小の単位のことを言います。
つまり、「thank」という単語であれば「th」「a」「n」「k」という音がそれぞれ単音にあたります。
英語には、この単音が 子音×24個 + 母音×7個、合計で31種類あります。
その内、日本語の発音に無い音は子音×10個 + 母音×2個、合計で12種類もあるのです。
つまり、所謂カタカナ英語で話すと、文章によりますが単純計算でおよそ全体の1/3は伝わらないことになります。
通じる英語を話すためには、最低限この「日本語に存在しない単音」を発音できるようになる必要があるのです。
②音の組み合わせ方
続いてですが、日本語は基本的に音が子音+母音の組み合せになっています。
例)みなさん、こんにちは。= mi na sa n、 ko n ni chi ha
一方で英語は、「子音のみ」「子音+子音の組み合わせ」で発音することも多いです。
例)Hello, everyone. = [ helou evriwʌn ]
→ v=子音のみ(実際には[vri]=子音 → 子音と流れるように発音)
これらの①単音・②音の組み合わせ方を意識してみてみると、
たった1単語の中でもカタカナ発音をすると通じない要素が出てくることが分かります。
例)everyone = [ evriwʌn ]
エブリワン = e bu ri wa n
この場合、
・単音が正しく発音されていない(例:v → b、ri → リ)
・無駄な母音が追加されてしまう(例:vri → bu ri)
・子音→子音と流れるように発音できていない(例:vri → bu ri)
などの理由から正確に通じない可能性が高まります。
このように、日本語に無い単音が発音できること、そして音と音の組み合わせを適切に行えることが英語らしい発音をするための重要なポイントと言えます。
3-2. ナミナミと抑揚のある滑らかなイントネーション
日本語はそれぞれの音と音が途切れがちで、抑揚も少なく平坦な発音が特徴です。
一方で英語は、音と音・単語と単語が繋がったり(=リエゾン/リンキング)、一つの文章でも山なりな抑揚がついたナミナミと滑らかな発音をします。
日本語の感覚のまま英語を話そうとすると、それぞれの音が独立し、かつ抑揚が少なくなってしまい英語らしい響きになりません。
音と音のつながり(単音-単音、単語-単語)
単語ごとのアクセントの位置
文脈からどこを強調したいか
これらを意識するとより滑らかな発音に繋がり、ネイティブスピーカーにとってすんなりと聞き取りやすい英語になります。
なかなか英語が通じないと、違う単語や言い方を模索してさらに伝わらないというドツボに陥ってしまいがちですが、相手が聞き取りやすい音・イントネーションで話すことの方が、なんだかんだ効果的だったりもします。
ぜひお試しください。
3-3. 表情・感情表現
最後は上述の3-2とも関連しますが、日本人が苦手と言われやすい表情づくりや感情表現です。
感情表現の仕方には様々ありますが、ここでは以下の2つに着目します。
①表情による表現:口角の角度、眉毛の動き、目線、歯の見せ具合など
②音による表現:声の高低・大小、抑揚の幅、話すペースなど
①表情による表現
発音の観点で言うと、日本語の発音は唇や舌の動きが英語に比べて少ないこともあり、英語よりも顔の筋肉を使いません。
(大人は特に筋肉が凝り固まり、話してる最中に上の前歯が見えない人も多いので是非周りの人を観察してみてください)
英語は発音の性質上、日本語より多くの筋肉を使い、かつ文化的にも感情表現が豊かです。 より英語らしさを出すには、顔の筋肉をほぐし鍛え、表情から何を伝えたいかを表現することを意識すると良いでしょう。
②音による表現
3-2でも記述しましたが、日本語と英語では抑揚のつけ方に違いがあります。
そのため、日本語の感覚のまま英語で話すと棒読みに聞こえてしまいます。
さらに感情を乗せて伝えるためには、重要な単語を強くハッキリと発音したり、話すペースにメリハリをつけるなども効果的です。
このあたりは海外の方が話す様子を見て真似るだけでも参考になると思います。
映画なども良いですが、筆者としては海外のバラエティ番組などの方が短時間での表情の移り変わりが多く参考になります。
もちろんこの表情・感情表現については日本語で話す時にも使える手法ですので、是非意識してみてください。
さて、このパートでは英語が通じやすい3つのポイントを主に発音の観点から解説してきました。
特に3-3の表情・感情表現については、チョコプラのお二人のようなプロの芸人さんにとっては当たり前のことかと思います。
そこで、次のパートでは3-1、3-2で述べた日本語と英語の違いを軸に、今回の「TT兄弟(英語バージョン)」について勝手ながらアドバイスをさせて頂きます。
4. 勝手にアドバイス!「TT兄弟」の英語をより「らしく」するための具体的な改善点
4-1. 英語の発音について
動画を見る限り、チョコプラのお二人の発音にはまだ改善の余地がありました。
例えば「T」の発音に着目すると、[ t ] の単音としての発音時間が短く母音が長いという点が気になります。
[ t ] 単体でしっかり発音しなければ、「チ」など全く違う音に聞こえてしまうこともあるので要注意です。
ではどうすれば良いのか、具体的な発音方法をご紹介します。
「T」の発音方法について
Tの発音は、厳密には日本語の「ティー」と異なります。
Tは「破裂音」に分類され、空気圧をためてから破裂させるように発音するのが特徴です。
日本語の「ティー」は、この「空気圧をためる」発音はしないので、弱く平坦な音になってしまいます。 ではどのように発音すれば良いのでしょうか。要点を絞って解説します。
《 Tの発音の仕方 》
「らららららら…」と早く連続で発音し、舌先が上あごについた状態で止める (これが基本のTの舌の位置です)
その状態のまま、舌の上の空間にグッと空気圧を溜める (空気が逃げないよう、舌のフチを上あごにつけ隙間ができないようにす るのがポイントです)
溜めた空気圧を一気に破裂させるイメージで、舌先を真下に向かって弾く (「タッ」や「トゥッ」ではなく、子音のみ「Tッ」と強く短く発音しましょう)
《 [ t ] の発音:英語発音矯正塾講師による見本 》
これが「T」の発音です。 これに母音の「i」をつけて「ti」と発音すれば、よりネイティブの発音に近づきます。
4-2. 抑揚について
英語は抑揚の付け方がポイントであると述べました。
ここで触れたいのはネタの中で決め台詞的に登場した、「Excellen-T!」の言い方についてです。
チョコプラのお二人は「エクセレン…ティー!」という風に、
「エクセレン」まで一気に言い、少し間が空いて「ティー!」という言い方をしていました。
これはとても日本語的な発音なのですが、それが何故かというと以下の理由が挙げられます。
母音の発音が短かった
「エクセレン」と「ティー」が繋がっていない
「T」の圧が弱い
より英語らしく発音するには、以下のポイントに注意すると良いでしょう。
母音を伸ばす
n と t の間を空けない
T を圧をためて弾くように発音する
つまり、「Excelleeeeeennnteeee!」のような発音になります。
これだけで、ぐっと英語らしい発音に近づくはずです。
5. まとめ
ここまでチョコレートプラネットの「TT兄弟」ネタについて、発音矯正を専門としている観点から解説してきました。
日本人が海外でネタを披露する際の超えるべき壁として、①英語が通じるか ②英語が通じた上で、ネタの内容がウケるか があります。
お二人のネタはそれ自体が面白いというのは疑う余地もありません。
そのため、①英語が通じるか というのがアメリカズ・ゴット・タレントの場では重要になるかと思います。
その点、チョコプラのお二人は
元々通じやすい音である「T」をネタの軸にしている
発音違いで誤解されそうな単語を上手く避けている
説明が無くても想像しやすいシチュエーションを選んでいる
という手法で上手く”英語の壁”を巧みに乗り越えていました。
どこまで計算されていらっしゃったのかは分かりませんが、海外でもしっかり勝負できる素地があるのは間違いありません。
これを踏まえると、チョコレートプラネットのお二人の更なる活躍が楽しみですね。
また、自分が発音できる音は聞き取れるようになるので、発音を鍛えれば審査員やMCとのコミュニケーションもよりスムーズになると思います。
是非、今後も海外進出を視野に入れているのであれば、発音をさらに磨いてより様々なネタをより多くの人に披露して頂けたらと思います。
最後に、この記事が日本のエンターテイメントで海外に挑戦したい方の参考に少しでもなれば幸いです。
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